龍潭譚背景イラスト

龍潭譚 Tyutandan IzumiKyoka × GakuNakagawa

インタビュー

「ストン」と作品世界に降りてしまった

鏡花作品―特に初期のものは、文語調の美文体で書かれているので、現代の読者には「難しい」と敬遠されがちです。でも、少々わからないところがあっても最後まで読み通して、イメージでなんとなく受け取るところから始めてみてほしいと思います。あるときバンッと世界が開いて、そこにストンと落ちると周りにすうっと風景が浮かび上がってくるんです。

私にとって、そんな風に作品のなかに降りちゃう経験は泉鏡花が初めてでした。書かれている風景と同じものを想像できると思えたんです。たとえば鏡花が「後に何かがいる」と書いていたら、本当に後ろに何かがいるような気配みたいなものが感じられるんですよね。

泉鏡花に出会う以前は、「谷崎のこの作品のこの文章がいい」というような感じで作品を好きになることはあっても、特定の作家を好きになるということはありませんでした。泉鏡花に関しては、文章の魅力もあるし他の人には描けない世界を描いているんだろうなと思いますので、わからなかったら「もう一度、わかるまで読んでみよう」という気持ちになります。そう思えた作家は、私にとっては泉鏡花だけです。