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龍潭譚 Tyutandan IzumiKyoka × GakuNakagawa

インタビュー

入社即解雇で始まった“面白い人生

大学卒業後は、「デザインをやるなら東京かな」と思い、東京の音楽レーベル事務所に就職しました。ところが働きはじめて2週間後の金曜日の夜、急に新入社員全員が社長室に呼びだされたんです。何の話かと思ったら、会社の急激な経営悪化で「全員解雇」と。大柄な社長さんに「申し訳ない。来週から来なくていい。一か月分の給料も出せない」と泣きながら頭を下げられました。僕、まだ引越しのダンボールもほとんど開けていなかったんですよ。

その後、新入社員みんなでごはんを食べに行ったら、他の人はすごく戸惑って深刻になっているなかで、僕だけは「なんか面白い人生がはじまるかな」と思ってしまったんです。「明日からどうする?」ってみんなは言ってるんだけど、「これ、しゃべったら面白いやろな」としか考えてなかったんです(笑)。もちろん、大学も実家も大騒ぎになりましたけどね。

とりあえずバイトしながら生活することにしたんですけど、そのときはじめて周りをじっくり見渡して「自分は何がやりたいんやろ?」と考えはじめました。そしたら、自分はデザインが好きだしモノを作りたいという気持ちがふつふつと沸いてきて。でも、スーツを着て就職面接を受けて「わたくしは、御社の……」とやるのもバカバカしく思えました。入社してもすぐクビになるかもしれないじゃないですか(笑)。

就活をするなかで、最終的に音楽系の会社をクライアントに持つデザイン会社を見つけて「これはいい」と思えたので企画営業として就職しました。その会社で上司になった先輩とすごくウマが合って、今の僕の素地となるいろんなことを教えてもらいました。

モノづくり工場を訪ね歩いて

その先輩は、「パソコンの前にいてもアイデアなんか浮かばないから、外に出てモノを作っている人に出会いなさい」という人でした。「自分だけの情報やアイデアを探せ」と言われて、外回りのついでに工場めぐりばかりしていたんですよ。

印刷工場やトムソン抜きの金型工場、何のモノづくりをしているのかわからない工場まで、とにかく現場を見せてもらいました。一番興味を持ったのは金型屋さん。もう夢中になって、パーツをもらっては「かっこええなあ!」ってホクホクしていました(笑)。もらった紙や型は資料としてファイリングして自分なりの情報をストックしていましたね。そして、クライアントから「何かアイデアない?」と言われたら、いつでも自分の引き出しからすぐ出せるようにしていました。

モノづくりをしている「職人さんたちの腕があるから」モノが作れるということをみんな意外と知らないんですね。会社のデザイナーたちも外に出ないから知らないんです。「外に出て現場を見ませんか?」と言っても、「雑誌とかでわかるから」と言われたりして、そういう考え方はどうなのかなと疑問に思っていました。

あるとき、先輩から「自分のとった仕事を自分でデザインしてみる?」と言われたんです。営業職の仕事をした後に、夜中や休日の時間でやるならいいよとチャンスをもらって。自分でアイデアを出して仕事をとり、自分でコスト計算をして、自分でデザインをして、作ってほしい職人さんにお願いをして作ったモノを世の中に出す。こんな面白い世界はない!と思いましたね。